作詞するとき、メロディーから言葉を決める人もいれば、作詞をしてから音をあてはめる人もいます。いずれの場合も、何も情報がない状態で作詞を始めると、まとまりのない歌詞になってしまいます。作詞するときは、言葉選びだけでなく登場人物や展開などを細かく作り込むのがコツです。
この記事では、作詞のコツ・注意点と基本的な手順を紹介します。リスナーを引き込む作詞のテクニック・技法も紹介するので、作詞の機会がある人はぜひ参考にしてください!
1.作詞のコツ・注意点
音楽制作を進める中で、作詞に困る人は少なくありません。心に残る作詞にするためには、いくつかのコツがあります。
ここでは、作詞のコツ・注意点を紹介します。作詞を始める前に確認しましょう。
・音数と字数を合わせる
日本語の歌詞では、1つの音符に1文字だけ乗せることが基本です。音符に対して文字数が多いと、字余りで歌いにくい歌詞になります。また、1番と2番で、同じメロディーに対する字数をそろえることも、聴きやすい歌詞に仕上げるコツです。
・サビに一番伝えたいことを盛り込む
曲中で最も盛り上がるサビの部分で、曲の個性やメッセージを強調しましょう。サビにタイトルを意識したワードがあると、曲全体に統一感が生まれます。AメロやBメロではサビにつながる展開を描き、メリハリをつけることがポイントです。
・リスナーが想像できる余裕をもたせる
作文のような作詞は、初心者によくあるNGパターンです。あまりにも分かりやすい言葉や、説明が多すぎる歌詞は、リスナーが感情移入するきっかけを奪いかねません。ときには辞書で違う表現を探すなど、慎重に言葉を選びましょう。
・フィーリングや直感も大切にする
作詞のノウハウに従うだけでなく、アーティストとしての直感を信じることも大切です。作詞に困ったときは、自分の想いを自由に書き綴ってみるのもおすすめ。何度もアイデアを練り直しつつ、納得できる作品に仕上げましょう。
2.作詞の手順
作詞を始める前に曲の構成を確認し、全体像を捉えましょう。曲構成の基本のパターンは次の通りです。
- Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→Bメロ→サビ
- Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Bメロ→サビ
- Aメロ→サビ→Aメロ→サビ→間奏→Aメロ→サビ
上記以外にも、AメロとBメロだけの曲や、Dメロがある曲もあります。
作詞する順番は、下記の通りです。
- サビ
- Bメロ
- Aメロ
曲の要となるサビのイメージを最初に固めて、サビの導入部分にあたるBメロ、歌いだしのAメロへと、世界観を広げていくことがポイントです。
アーティストによって作詞方法はさまざまですが、作詞に慣れていない人は手順に沿って進めましょう。ここでは、作詞の手順をプロセスごとに解説します。
2-1.テーマを決める
まず、歌詞のテーマを決めます。恋愛、青春、卒業など、大まかなテーマを決めてから、ディテールを掘り下げていきましょう。
たとえば、「恋愛」というテーマでも、次のようにさまざまな設定が考えられます。
- 恋愛→失恋→恋人と別れた→今も未練がある
- 恋愛→プロポーズ→結婚に運命を感じている→ずっと一緒にいたい
- 恋愛→片思い→好きな人には恋人がいる→まだ諦められない
メロディーに合ったテーマを選ぶことも、作詞をスムーズに進めるコツです。
2-2.ジャンルを決める
誰に聴いてもらいたい曲なのか、ターゲットを明確にしましょう。ラブソングでも、「10代に対するラブソング」と「結婚20年を迎える夫婦に対するラブソング」では、歌詞の内容も大きく異なります。
また、どのようなシーンに適した曲にするのかも考えましょう。「結婚式で使ってもらいたい」「1人で静かに聴いてもらいたい」など、曲が流れる場面を想像すると、作詞の方向性が定まります。
2-3.構成と展開を決める
作詞の内容に一貫性をもたせるために、曲のストーリーを設定します。
作詞の展開を決める際には、「5W1H」を明確にしましょう。5W1Hとは、「When(いつ)/Where(どこで)/Who(誰を・誰が)/What(何が)/Why(なぜ)How(どのように)」のことです。
例として、5W1Hにあてはめて歌詞を設定すると、次のようなイメージになります。
冬の季節に(いつ)、就職して上京する幼馴染を(誰を)、駅まで見送る道の途中で(どこで)、自分がさみしさを感じていることに気づき(なぜ)、ずっと好きだったと気づいた(何が)
2-4.主人公の細かい設定を決める
主人公の人物像を明確にすると世界観が広がり、作詞のヒントが得られます。たとえば、次のような設定を考えてみましょう。
- 性別
- 年齢
- 性格
- クセ
- 好きな食べ物
優しい性格の主人公なら温和な歌詞に、気が強い主人公ならややトゲのある歌詞になりますね。主人公以外にも登場人物がいる場合は、それぞれに詳細な設定を決めておきましょう。
2-5.使いたい言葉を組み合わせる
設定したテーマ、ストーリー、主人公の特徴から連想できるキーワードを書き出し、それらを組み合わせながら作詞を進めます。最初からまとまった文章を考えなくても大丈夫です。単語を書き出していく中で、歌詞がひらめくこともあります。
作詞のコツは、とにかく思い浮かんだ言葉をメモすること。歌詞に合う言葉や、使いたい単語は、都度書き出しましょう。
3.作詞のテクニック・技法
作詞のテクニック・技法を押さえて、印象深い歌詞に仕上げましょう。
リスナーの心を一気に惹きつけるには、キラーフレーズ(殺し文句)が効果的です。何気なく聴いていても、ハッとするような歌詞があれば、リスナーはどんどん曲の世界観に引き込まれていきます。ヒット曲にはキラーフレーズがあることが多いので、ぜひチェックしてくださいね。
耳に残る作詞にするためには、語感にも注意してみましょう。言葉の意味よりも、メロディーへのフィット感を重視する作詞家も少なくありません。年代の若いリスナーには、語感のよい曲が人気です。
ここでは、初心者でも簡単に取り入れられる作詞のテクニック・技法を紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
3-1.文章表現方法を変える
印象を強めたり上手にメロディーに乗せたりするために、文章の表現方法を変えることも1つの手です。作詞で使える文章表現の技法として、次の4つがあります。
・倒置法
語順を逆にして、印象を強めるテクニックです。
例:「あなたのことは決して忘れない」→「決して忘れない、あなたのことは」
・直喩
「まるで」「~のように」などの説明の言葉を用いて、ほかのものにたとえる比喩表現です。
例:「彼女の肌はまるで雪のようだ」
・隠喩
置き換えていることを表現せずに、直接ほかのものにたとえる比喩表現です。
例:「彼女の肌は雪だ」
・擬人法
人ではないものを、人にたとえて表現する比喩の一種です。
例:「雪が躍っている」
3-2.反復させる
伝えたいことを強調させるためには、反復法を活用しましょう。反復法とは、同じ言葉を繰り返し、文章のインパクトを強めるテクニックです。
<反復法の作詞例>
「届け届け 私の想い」
「ずっとずっと 春を待っていた」
反復法を使うときは、メロディーと合わせることがポイントです。多用しすぎると、リスナーが飽きる可能性もあるので注意しましょう。
3-3.韻を踏む
韻とは、発音が似ている言葉を合わせて、文章にリズムを作ることです。言葉の最後を母音(aioeo)で合わせると、耳当たりのよいメロディーになります。
<韻を踏む作詞例>
「願いは叶わない(ai) 忘れてください(ai)」
「気持ちは高ぶり(ui) 燃えるように熱い (ui)」
メロディーによっては、母音が合っていない場合でも最後の言葉を合わせるだけで響きがよくなる例もあります。韻の踏み方はいろいろあるので、口ずさみながら探ってみましょう。
まとめ
自分で作詞するときは、歌いやすさ・聴きやすさ、リスナーが感情移入できる構成にしましょう。メロディーに合ったテーマを選ぶのも、リスナーを曲の世界観に引き込むコツです。主人公以外にも登場人物がいる場合は、それぞれの詳細な設定も必要になります。
作詞のテクニックとして、文章の表現方法を変えたり韻を踏んだりするというものがあります。伝えたいことは反復法を使って強調すると、効果的です。
リスナーの心に残る作詞を作るときは、ぜひ今回紹介したコツを実践してくださいね。