唾奇さんは、日本のヒップホップシーンには欠かせない沖縄出身のラッパーです。幼いころの辛い経験から綴る重たいリリックを、おしゃれなメロディに乗せた楽曲を配信しています。多くの楽曲のメロディを担当するのは相棒である、トラックメイカーのSweet Williamさんです。2人は偶然の出会いから、多くの楽曲をともに制作する相棒となりました。
当記事では、唾奇さんの経歴や所属するクルー、相棒であるSweet Williamとの出会いなどについて解説します。唾奇さんの楽曲に興味のある方は、ぜひご覧ください。
1.唾奇(つばき)とは?
唾奇(つばき)さんは、沖縄県那覇市寄宮生まれのラッパーです。クリエイター集団「Pitch Odd Mansion」に所属しており、自身の経験や心情を赤裸々に歌った楽曲が支持を集めています。地元沖縄を拠点としながら、多くのイベントで活躍し、日本のヒップホップシーンにおいて大きな注目を集めている人物です。
1-1.唾奇の経歴
1991年に沖縄で生まれた唾奇さんは、複雑な家庭環境のもと生活苦の中で幼少期を過ごしました。小学校6年生のときにヒップホップグループ「キングギドラ」の「トビスギ」を聴いて衝撃を受け、ヒップホップに魅了されました。
ラップを始める前はダンサーでしたが、2年遅れで入学した高校でネットラップに出会い、17歳のときにラップの歌詞を書き始めます。最初は自宅でパソコンを使って、録音したラップをインターネットに投稿して活動していたものの、次第にイベントにも参加するようになりました。ラップができる場を作るために、現在まで続くパーティー「HITOBASHIRA」を自ら始めています。
その後、勤め先のバーでビートメイカー/プロデューサーのSweet Williamさんと偶然出会い、多くの曲を共作し始めます。2017年に「唾奇×Sweet William」名義で発表したアルバム「Jasmine」は高い評価を得て、唾奇さんの知名度が大きく高まるきっかけとなりました。同年、唾奇さんは音楽番組「流派-R SINCE 2001」にて「流派BEST RAPPER AWARDS 2017」の第1位を獲得しています。
2018年にはソロアルバム「道-TAO-」を発表し、現在もライブへの出演や他アーティストとのコラボも精力的に活動しています。
1-2.唾奇の名前の由来
唾奇さんの名前は、漫画「ソウルイーター」の登場人物である「中務椿」(なかつかさつばき)に由来しています。「椿」という表記のままだとホストをイメージしてしまうという理由で、漢字を変更し「唾奇」としました。
唾奇さんはアニメやアニメソングが好きで、「ドロヘドロ」や「Re:ゼロから始める異世界生活」などの作品を見ていることを、以前にラジオで発言しています。
2.唾奇に関係するアーティスト・クルー
唾奇さんは、これまでさまざまなジャンルのアーティストとコラボしながら活動してきました。2018年には、ジャンルレスユニット変態紳士クラブのメンバー・WILYWNKA(ウィリーウォンカ)さんの楽曲「Take It Easy」に参加しています。
所属するヒップホップ・クルーのメンバーとも深い関わりを持ちながら楽曲制作を行ってきました。唾奇さんが所属するクルーの1つである「604」(ロクマルヨン)には、HANGさんやMAVELさんなど沖縄の実力派ラッパーがいます。604は、もともとMAVELさんが住んでいたワンルーム(604号室)に、ホームレスとなった唾奇さんが居候を始めたことをきっかけに集まった仲間です。
ここでは、唾奇さんと特に関係の深い存在であるSweet Williamさんと、604以外の唾奇さんが所属するクルーについて紹介します。
2-1.Sweet William
Sweet Williamさんは、愛知県出身のビートメイカー/プロデューサーです。唾奇さんと同じくクリエイター集団「Pitch Odd Mansion」に所属し、唾奇さんとタッグを組んで多くの曲を発表してきました。
唾奇さんとSweet Williamさんの出会いは、卒業旅行で沖縄に来ていたSweet Williamさんが、唾奇さんが店長を務める国際通りのバーを偶然訪れたことから始まります。2017年には、大きな話題を集めた連名アルバム「Jasmine」を発表しました。Sweet Williamさんの作るメロディアスな曲と唾奇さんの書くリアルな歌詞が融合し、多くの名曲が生まれています。
2-2.Pitch Odd Mansion
「Pitch Odd Mansion」(ピッチ・オッド・マンション)は、クリエイターの國枝真太朗さんが主宰するヒップホップ・クルーです。ラッパー、シンガー、バンド、プロデューサー、ダンサー、DJとさまざまな業種のメンバーがそろっています。
唾奇さんやSweet Williamさんのほか、ラッパーにはRAITAMENさんやAce the Chosen onEさん、また女性シンガーソングライターのkiki vivi lilyさんなどが所属しています。國枝真太朗さんは、日本語ラップのMVを数多く担当しており、唾奇さんの楽曲のMVも手がけています。
2-3.Final Weapon Company
「Final Weapon Company」(ファイナル・ウエポン・カンパニー)は、ラッパーのHANGさんが主宰する音楽レーベルです。唾奇さんのほかに、ラッパーのTOCCHIさんやビートメイカーのhokutoさんなどが所属しています。楽曲制作、ジャケットデザイン、MV撮影などをレーベル内で一元化して行っています。
クルーの活動の1つとして唾奇さんとHANGさん、TOCCHIさんでラジオ番組「Final Weapon Company RADIO」も配信しています。視聴者からのお悩み相談に応えるといった番組で、YouTubeとSoundCloudで配信中です。
3.唾奇の楽曲への想い
唾奇さんの楽曲は、特有のリズム感や発声に加え、自らの思いや体験をありのまま発信する等身大の歌詞が特徴的です。家を出ていった母親の代わりに祖母に育てられ不遇な生活を送ってきた唾奇さんの書く歌詞には、壮絶な実体験が反映されています。
しかし、唾奇さん自身は、断片的に書いた歌詞を組み合わせてメロディをつける中で、聴き手をクスッと笑わせたいと考えていると言います。その時々の自分を包み隠さず表現し、聴き手を楽しませるラフな姿勢は唾奇さんの魅力です。生々しい内容の歌詞であっても、メロディアスなサウンドに乗せて軽やかに表現されています。
4.唾奇の代表曲を3曲紹介
唾奇さんは、Sweet Williamさんなどのアーティストとコラボしながら、多くの名曲を生み出してきました。「Made my day」(2017年)や、同郷のラッパーCHICO CARLITOを客演に起用した「Let Me」(2017年)などがおすすめの楽曲です。
ここでは、唾奇さんの楽曲の中でも特に代表曲と言える3曲を紹介します。
4-1.道-TAO-
唾奇さんの代表曲「道-TAO」は、2015年にYouTubeで公開されました。2018年には、唾奇さんの初のソロアルバムの中の1曲としてCD化されています。作曲はトラックメイカーのTNGさんが担当しました。
「道」(タオ)とは中国哲学においてすべての物や人が通る場所であり、万物の根源を表しています。唾奇さんの沖縄での暮らしがリアルに感じられる、チルで心地よい1曲です。
4-2.愛のままに
「愛のままに」は、ラッパーのBASIさんが2018年に発表したアルバムの中の1曲で、唾奇さんが客演で参加しています。YouTubeでのMV再生回数が2,200万回を超える人気曲です(2023年2月現在)。
BASIさんが唾奇さんのバックボーンを理解した上で、唾奇さんの考える愛を歌ってほしいと考えたことからこの作品は生まれました。普段の唾奇さんとは違った一面が見られる、温かみのある1曲として、多くの支持を集めています。
4-3.Soda Water
2017年にリリースされたヒップホップのコンピレーションアルバム「2 HORNS CITY #1 – MARS DINER -」に収録された1曲です。同アルバムは、「Pitch Odd Mansion」と、ヒップホップレーベル「MS Entertainment」が共同でプロデュースしました。アルバムの中でも高い人気を誇る、ポジティブな雰囲気の楽曲です。
國枝真太朗さんが監督を務めたMVでは、仲間達とダイナーでリラックスする唾奇さんの姿を見ることができます。
まとめ
唾奇さんは、沖縄県那覇市出身のラッパーです。もともとダンサーでしたが、高校生のころにネットラップにハマってからラップの歌詞を書き始めました。唾奇さんの勤め先で偶然出会ったSweet Williamさんと相棒になり、これまで多くの楽曲を制作しています。
唾奇さんの楽曲には唾奇さんの経験や心情を素直に歌った楽曲が多く、ダンサーとして活躍していたころに培われたリズム感や音楽性が生かされているのが特徴です。ソロとしての活動だけでなく、さまざまなアーティストとのコラボやクルーに所属し活動を行っています。イベント開催・参加活動を精力的に行っているため、気になる方はぜひ生で、唾奇さんの歌声を聴いてくださいね!