「夜に駆ける」は、2019年に発表されたYOASOBIのデビュー曲です。SNSで話題になったことから爆発的に人気となり、たちまちYOASOBIの知名度を高めました。星野舞夜さんの「タナトスの誘惑」という小説を原作に、作詞作曲された楽曲でもあります。
当記事では、YOASOBIと夜に駆けるについて、また夜に駆けるの歌詞の意味を考察します。YOASOBIの楽曲をより楽しみたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.夜に駆けるとは?
【「夜に駆ける」配信日決定】
— YOASOBI (@YOASOBI_staff) December 4, 2019
12/15(日)より「夜に駆ける」のダウンロード/ストリーミング配信開始します。
既にお待たせしすぎたかもしれませんが、あと少しだけ、よろしくお願いします…!
そしてMVは60万回再生を突破!本当にありがとうございます!https://t.co/uA2bKQoZof#YOASOBI pic.twitter.com/PeDQdhxzff
「夜に駆ける」は、大人気音楽ユニット「YOASOBI」のデビュー曲です。本曲は、2019年11月16日に公式チャンネル上で、ミュージックビデオとしてリリースされました。YOASOBIの代表曲として多くの方から支持されています。YOASOBIの公式チャンネルでは、2022年12月時点で2.6億回の再生回数を記録しています。
2019年10月に結成したYOASOBIは、コンポーザーとして音楽を務めるAyaseさんと、ボーカルのikuraさんからなる音楽ユニットです。「小説を音楽にするユニット」をコンセプトとして活動し、音楽配信コンテンツやSNSを通して知名度を上げ、見事大ブレイクしました。
作詞や作曲を手がけるAyaseさんは、過去に「The Bloom」のボーカル兼リーダーとして約9年間活動していました。ikuraさんは、アコースティックセッションユニット「ぷらそにか」のメンバーとして活動していました。現在はYOASOBIに加えて、シンガーソングライターとしても活動中です。
2.夜に駆けるの歌詞の意味とは?
YOASOBIは「小説から音楽を作る」という、独創的な曲作りをしています。「夜に駆ける」は、小説「タナトスの誘惑」の内容とリンクさせて作り上げた楽曲です。
誰かの背中を押すような明るさよりも、明るさの中にダークな部分を持ち合わせることで多くの若者に刺さったと、Ayaseさんは語っています。時代や人が求めることを察するAyaseさんの感性が、大ヒット曲を生み出した理由と言えるでしょう。
ここでは、歌詞に込められた意味を順番に紹介します。
2-1.沈むように溶けてゆくように〜
沈むように溶けてゆくように
二人だけの空が広がる夜に
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
最初の歌い出しは、世界に2人だけしか存在しない世界観をイメージさせる歌詞です。しかし、本曲の原作である星野舞夜さんの小説「タナトスの誘惑」では、彼女が屋上から飛び降りるシーンから始まります。そのため、本曲のミュージックビデオも同じ情景が描かれており、歌詞からも「死」を連想させる意味と考察できます。
2-2.「さよなら」だけだった~
「さよなら」だけだった
その一言で全てが分かった
日が沈み出した空と君の姿
フェンス越しに重なっていた
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
原作小説で2人の出会いは、主人公が彼女の飛び降り自殺を止めたことです。「さよなら」と「君の姿フェンス越し」という歌詞から、やはり「死」や「自殺」を連想できます。また、歌詞のそれぞれの一文が過去形で表現していることで、過去の出来事として考えられます。
2-3.初めて会った日から~
初めて会った日から
僕の心の全てを奪った
どこか儚い空気を纏う君は
寂しい目をしてたんだ
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
原作小説にもあるように、主人公は儚げな魅力のある彼女に一目惚れをします。初めて出会った日から主人公は彼女に惹かれ、次第に仲良くなっていくストーリーです。また、飛び降り自殺のシーンから転換したことから、曲全体が主人公の回想であるという見方もできます。
2-4.いつだってチックタックと~
いつだってチックタックと
鳴る世界で何度だってさ
触れる心無い言葉うるさい声に
涙が零れそうでも
ありきたりな喜び
きっと二人なら見つけられる
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
「いつだってチックタックと鳴る世界で」とは、時計の針が動いている様子を表します。まさに「生」を感じる歌詞と言えるでしょう。続く歌詞では、「これから先も生きていれば理不尽なことも辛いこともあるが、ささやかな喜びを見つけながら2人で一緒に生きよう」という主人公の想いを表現していると予想できます。
2-5.騒がしい日々に笑えない君に~
騒がしい日々に笑えない君に
思い付く限り眩しい明日を
明けない夜に落ちてゆく前に
僕の手を掴んでほら
忘れてしまいたくて閉じ込めた日々も
抱きしめた温もりで溶かすから
怖くないよいつか日が昇るまで
二人でいよう
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
恋人同士の2人ですが、主人公は辛く苦しい想いを抱えた彼女を見ていると考えられます。彼女を抱きしめ、主人公が描く明るい世界に彼女を連れていこうとしているのでしょう。「怖くないよ」「二人でいよう」など、前向きな言葉もありますが、彼女の本音を理解していない主人公の様子を表現しているとも解釈できます。
2-6.君にしか見えない~
君にしか見えない
何かを見つめる君が嫌いだ
見惚れているかのような恋するような
そんな顔が嫌いだ
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
原作小説では「君にしか見えない何か」とは、死神を表します。死神を見つめる彼女の目は、まるで恋をするような表情をしており、主人公の嫉妬心を描いている場面です。彼女は「死」に対して、焦がれる気持ちを今も持っていると考えられ、主人公はそうした彼女を理解できず、焦りや苛立ちを感じる印象も受けます。
2-7.信じていたいけど信じれないこと~
信じていたいけど信じれないこと
そんなのどうしたってきっと
これからだっていくつもあって
そのたんび怒って泣いていくの
それでもきっといつかはきっと僕らはきっと
分かり合えるさ信じてるよ
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
彼女を想う気持ちと、疲れた主人公の感情が混合した場面です。彼女の気持ちを理解できない自分自身にも気づいており、それでもいつかは「分かり合えること」を信じていきたいという、主人公の前向きな姿勢が表現されています。主人公の必死な気持ちが伝わってくる場面でもあります。
2-8.もう嫌だって疲れたんだって~
もう嫌だって疲れたんだって
がむしゃらに差し伸べた僕の手を振り払う君
もう嫌だって疲れたよなんて
本当は僕も言いたいんだ
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
主人公は、これまで何度も彼女を救おうとしてきました。「もう嫌だって疲れたんだって」と、疲れ切った感情がありのままに描かれています。がむしゃらに手を差し伸べるほど限界にきている主人公ですが、最終的には彼女に手を振り払われます。彼女の前では、弱音を見せたくないという最後の意地も感じられる場面です。
2-9.ほらまたチックタックと~
ほらまたチックタックと
鳴る世界で何度だってさ
君の為に用意した言葉どれも届かない
「終わりにしたい」だなんてさ
釣られて言葉にした時
君は初めて笑った
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
再び「チックタックと鳴る世界で」という言葉が登場しますが、今回は彼女を救う難しさを表現しています。「終わりにしたい」と口走った主人公の言葉は、別れ話でなく人生を終わりにしたいという意味です。これまでどのような言葉も手段も彼女に届かず、「終わりにしたい」というのも本心ではなかったものの、彼女は意外にも笑っていました。
2-10.騒がしい日々に笑えなくなっていた~
騒がしい日々に笑えなくなっていた
僕の目に映る君は綺麗だ
明けない夜に溢れた涙も
君の笑顔に溶けていく
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
「笑えなくなっていた」は、彼女ではなく、主人公でした。彼女とともに生きる望みを一度捨てたことで心が軽くなり、彼女の気持ちを理解できた瞬間でもありました。彼女の笑顔こそが、主人公が心から求めていたもの。今までの苦しみは彼女の笑顔によって消え、初めて見る笑顔を「綺麗だ」と表現しています。
2-11.明けない夜に溢れた涙~
明けない夜に溢れた涙
変わらない日々に泣いていた僕を
君は優しく終わりへと誘う
沈むように溶けてゆくように
染み付いた霧が晴れる
忘れてしまいたくて閉じ込めた日々に
差し伸べてくれた君の手を取る
涼しい風が空を泳ぐように今吹き抜けていく
繋いだ手を離さないでよ
二人今、夜に駆け出していく
引用:Utaten「夜に駆ける」/2022/12/09
最後には、主人公の考えと行動が変わります。今まで彼女の気持ちを理解できなかった主人公ですが、彼女は死ぬのを止めてもらいたかったのではなく、一緒に死にたかったのだと理解しました。原作では、死神の正体は彼女です。そのため、死神を見ていたのは、彼女ではなく、主人公だったと考察できます。今回は彼女から手を差し伸べてもらい、分かり合うことができた2人は、一緒に身を投げ出します。
まとめ
「夜に駆ける」はYOASOBIによって、「タナトスの誘惑」という小説を題材に作られた楽曲です。2019年11月16日にミュージックビデオがリリースされ、TikTokで多くの方に使用され大人気曲となりました。YouTubeでは2022年12月時点で2.6億回の再生回数を記録しています。
夜に駆けるの歌詞は、「死」を表現している楽曲です。彼女の飛び降り自殺を止めることで出会った2人は、最後「夜に駆けだしていく」という表現で自殺をします。明るいサウンドの中にダークな意味がこもった歌詞で歌われる「夜に駆ける」。歌詞の考察を知った上で、ぜひ再度聴いてみてください。
※当記事は2022年12月時点の情報をもとに作成しています